部品メーカーの品質管理部門では、仕入先から届く検査成績書(PDF・書式は仕入先ごとにバラバラ)から寸法・硬度・材質などの測定値を読み取り、品質管理台帳のExcelへ手作業で転記していました。1件あたり約40分、月200件で月130時間超の作業です。本プロジェクトではまずフェーズ1(PoC)として、書式の異なる帳票から測定項目を自動抽出するAIエンジンを開発し、学習に使用していない検証用帳票20件で平均抽出精度92%を達成。続くフェーズ2で、PDFをアップロードするだけでAIが読み取り、担当者は画面上で確認・修正して台帳形式で出力できるWebアプリケーションを開発し、本番環境へ実装しました。転記1件あたりの作業時間は約40分から約7分になり、月あたり100時間以上の工数削減を実現しています。
対象業界、解決した課題、現在のフェーズ、採用したソリューションと得られた結果を、まずはサマリとしてまとめています。
仕入先からの受入検査データを扱う、部品メーカーの品質管理業務
書式がバラバラな検査成績書からの測定値の読み取りと、品質管理台帳への手作業転記の削減
フェーズ1でAIの抽出精度をPoC検証した後、フェーズ2で現場が日常業務で使えるWebアプリケーションを開発し本番環境へ実装
フェーズ1では、仕入先ごとに書式が異なる検査成績書(PDF)から、品名・ロット番号・検査項目・測定値・判定結果などを自動抽出するAIパイプラインを開発しました。帳票のレイアウト解析とOCR、LLMによる項目の意味理解を組み合わせることで、テンプレート登録なしで未知の書式にも対応できる構成です。フェーズ2ではこのエンジンを組み込み、PDFのアップロードからAI読み取り、画面上での確認・修正、品質管理台帳形式(Excel互換)での出力までを一気通貫で行えるWebアプリケーションを構築。SSO認証と権限管理、修正履歴の記録、読み取り精度を自動集計するダッシュボードまで備えた、実業務にそのまま乗る形で納品しています。
フェーズ1のPoCでは、開発時の学習に使用していない検証用帳票20件(仕入先10社分・書式10種類以上)で精度を評価し、平均抽出精度92%・全件で80%以上を達成。事前に合意した精度保証条件をクリアし、本番開発へ進む判断材料を提供しました。フェーズ2の本番導入後は、転記1件あたりの作業時間が約40分から約7分(AI読み取り+人の確認・修正)に短縮され、月200件ベースで100時間以上の工数削減を実現。AIの読み取り結果と人の修正内容の差分から精度を自動記録する仕組みにより、書式追加や精度劣化にも運用しながら気づける状態を整えました。
なぜこのプロジェクトが立ち上がったのか、その背景を整理します。
部品メーカーの品質管理部門では、仕入先から納品のたびに検査成績書(PDF)が届き、記載された寸法・硬度・外観判定などの測定値を品質管理台帳のExcelに転記する業務が発生します。
検査成績書の書式は仕入先ごとに異なり、同じ「硬度」でも記載位置・単位・表現がバラバラです。そのため転記は書式を読み解ける担当者の手作業に依存しており、1件あたり約40分、月200件で月130時間超の工数がかかっていました。
繁忙期には転記が滞って台帳の更新が遅れ、品質トレーサビリティの確認に時間がかかることも課題でした。汎用OCRの導入も検討しましたが、書式ごとのテンプレート登録が現実的でなく断念した経緯があり、「テンプレートなしで多様な書式を読めるAI」を求めて相談をいただきました。
過去の課題や、これまでの方法で解決しきれなかった理由を明確にします。
最大の課題は、帳票の書式が仕入先ごとに異なり、しかも予告なく変わることでした。テンプレート型のOCRでは書式が増えるたびに登録・保守が必要になり、数十社分の帳票を維持するのは現実的ではありません。また、測定値は表の中だけでなく備考欄や図中に書かれていることもあり、単純な文字認識だけでは「どの数値がどの検査項目のものか」を判別できません。さらに、品質データという性質上、誤転記は許されないため、AIに全自動で任せるのではなく人の確認を前提としたワークフローの設計が必要でした。
クライアントが抱えていた状況と、それに対して弊社が提供できる強みの両面から整理します。
基本方針から提案ポイント、発注者にとっての価値、そしてなぜこの方法を選んだのかという判断根拠までを順に示します。
「必要な項目が正しい検査項目に紐づいて抽出された割合」という抽出精度の定義を要件定義段階で明文化し、発注者・開発者双方が同じ基準で成果を評価できるようにしました。検証用帳票は開発時の学習に使用せず、実運用に近い条件で汎化性能を評価しています。
本プロジェクトで我々がスクラッチから設計・実装したコンポーネントを、主要なものから順に列挙します。
モデルが判断を行うために必要なデータと、その形式・取得元を整理します。
推論結果としてどのような形でデータを外部へ渡すか、その形式と活用法を示します。
社内系統及び外部サービスとの接続点と、その接続方式をまとめます。
見えずらい部分で効いた設計・実装上のポイントを大きなものから順に記します。
キックオフから本番稼働までに要した期間と、本プロジェクト全体の費用感をまとめます。
フェーズ1(PoC):要件定義3週間+開発9週間/フェーズ2(本開発):要件定義〜開発・テスト〜検収で約8週間
フェーズ1(要件定義・PoC)400万円+フェーズ2(アプリケーション開発)約420万円(税抜)。別途、運用コスト(クラウド利用料+外部API従量課金)と保守(月額制または障害時対応のみ)を設定